449 ガルーダ機事故と化学熱傷と灯油
私が徳洲会福岡病院に勤務していた1996年に福岡空港で墜落事故が起きました。
バリ島に向かう予定のガルーダ機が離陸に失敗して墜落して炎上、3名の死亡者が出ました。
その時、私は外来が終わって、さぁ、昼飯を食うぞと食堂に向かっていた時でした。
患者さんから、『先生、今から大変だよ。空港で墜落事故が起こったらしいよ』と言われました。
空港の方を見ると、煙が上がっています。
副病院長がアナウンスで、予定手術を全てキャンセルして、外傷患者搬入に備えるように言っていました。
続々患者さんが救急搬入されました。
幸い、救急搬入された患者さんの中には緊急手術を必要とする方はおられませんでした。
滑走路をオーバーランしてあまり高度を上げてない時に墜落したのです。
機体の損壊は少なかったそうですが、機体は中央付近で折れ曲がり、機首と尾翼が高くなっていました。
その為、機首の非常ドアが高い位置にあり、乗客の皆さんは脱出時にそこから飛び降りたそうです。
その時に尻餅をついて腰が痛い女性がいました。
早速、診察し検査をすると腰椎圧迫骨折でした。
幸い、手術を必要とするようなものではありませんでした。
その方は娘さんと旅行に行く予定だったとの事、入院の手続きをして一安心。
ほっとしたのも束の間、今度は娘さんも腰が痛いと言われました。
診察・検査したところ、同じように腰椎圧迫骨折でした。
お二人は同じ部屋に入院して頂きました。
症状が落ち着いたところで、ご自宅のある久留米市の病院に転院されました。
実は、乗客の治療がひと段落した後が、大変でした。
ジェット機は離陸直後なので灯油と似た成分のジェット燃料満載でした。
消防士の方々は地面に溜まったジェット燃料を掻き分け、浴びながら
必死で消化活動と救助活動をして頂いたのです。
長期間(数時間)ジェット燃料が皮膚に付着していました。
化学熱傷が生じたのです。
厚生労働省でも注意喚起がありますが https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/yakushouyakedo.html
灯油でも生じます。
次々に消防士の方が病院に来られました。
両足や両手が赤くなりヒリヒリと痛むと言われます。
全身から灯油の匂いがしています。
すぐに、服を脱いでもらって、病院のシャワー室を使用。
多量の水で肌からジェット燃料を洗い流してもらい、強く擦らないようにさらに石鹸でも
洗い落としてもらいました。
この事件以来、飛行機事故でのジェット燃料漏洩時の対応が変わったと聞いています。
これは、一般家庭でも起こります。
長時間、灯油に触れたままだと同じようなことが起こるのです。
服に灯油が付いたらすぐに着替えて、付着部は多量の水で灯油を洗い流しましょう。
石鹸は使用して良いようですが、強く擦る事はしないように。
すぐに洗い流せば良いのですが、数時間、気付かないでいると、発赤や痛みが出てきます
この時はすぐに病院を受診しましょう。