444 治療しているのに骨密度が上がらない人へ

①特に女性は普通の生活をしていると
 骨密度が低下する。
②一番の治療は毎日運動(散歩する事
 1日30分 水中歩行は役に立たない)
③薬が効いているかは骨密度ではなく、
 同年齢での平均骨密度の比較で見ると
 よく分かる。
④薬の飲み方を間違えると効果が無くなる
 薬がある。
歯の治療で注意しないといけない薬と
 注意しなくてもよい薬がある。

①女性は若い頃は女性ホルモンで骨密度を維持しています。
その為に閉経が起こる50歳ごろから急激に骨密度が低下していきます。
72歳の平均骨密度は、治療が必要なレベルになります。

骨密度の変化
もし、脊椎圧迫骨折や手首、股関節などの骨折歴があるなら(骨粗鬆症の人に多い骨折)、
62歳の平均骨密度が、治療必要となるレベルです。

②骨粗鬆症にならないようにするために最も重要な事は毎日運動する事です。
骨に連続した刺激を与えないといけません。30分の散歩でよいので、毎日する事です。
 骨粗鬆症に効果はない
食事やサプリメントを気にされる方が多いのですが、それよりも運動の方が遥かに有用です。
そして残念ながら水中歩行は役に立ちません
踵落としも良いのですが、放送された数日〜数週間後に踵が痛いと来院される方が多いです。

③「骨粗鬆薬を内服している」+「散歩している」方は
骨密度が維持もしくは改善してきます。
ところが、中には骨密度が上がりにくい為、
全然、効かないと思われる方がおられます。
当院では血液検査で内服薬の効果を見ています。
ほとんどの方は血液検査で骨粗鬆症薬の効果が出ています
ただ、骨密度回復のスピードが遅い為、分かりにくいのです。
そこで骨密度の代わりに同年齢の平均骨密度比較で見ると
徐々に回復してくる事がわかります。
同年齢平均骨密度の比較では初診時は80%程度だった人が
100%を超えるようになります。
骨密度の評価方法
上のグラフはある女性の10年以上前から最近までの
骨密度測定結果です。
緑の線は若い女性の骨密度との比較で、何%あるかを示し、
骨粗鬆症の治療が必要かの判断をする指標です。
70%以下は骨粗鬆症の治療が必要な人です。
青い線各測定時の年齢の平均骨密度との比較です。
骨密度(緑の線)を見ると骨密度はあまり上がらず、
薬の効果は無いように見えますが、
各測定時の年齢の平均骨密度と比較してみる(青の線)と
初診時は8割以下だったのが
最近は100%超えです。薬の効果が出ているのです。
骨密度の回復は遅いのですが、薬を飲み続けていると
骨密度の変化しなくても同年齢の方より
骨密度が高くなっています

④骨粗鬆薬でもいろいろあります。

骨粗しょう症治療の主な薬剤

  • カルシトニン
  • ビスホスホネート
  • 女性ホルモン 現在あまり使われない
  • 選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM:サーム)
  • デノスマブ(ヒト型抗RANKLモノクローナル抗体製剤)

当院ではSERMが多いのですが
月に1回とか4週に1回の内服の薬や注射、
6ヶ月に1回 + 毎日の内服薬や
1年に1回の点滴+毎日の内服薬があります。
これらはビスホスネート薬デノスマブと言われる薬です。
破骨細胞の働きを抑えて、骨が分解されるのを止めるのですが、
内服薬の場合非常に吸収されにくい薬です。
そのため、
内服時は胃の中が空っぽの朝食前に水だけで飲み、
30分は横にならないようにと指示されます。
このような飲み方をしても1%ほどしか吸収されないと聞いています。
初診後にすぐに他院(整形外科ではありません)で、
骨粗鬆症薬を処方を希望され、その後は当院に受診していなかった方が8年ぶりに来院されました。
薬は継続して内服していたそうですが、骨密度検査をしていなかったため、
当院で骨密度検査をすることになりました。
びっくりです。
骨粗鬆症治療を受けていない人と同じレベルの骨密度でした。
当院でそんな方はいなかったので悩みました。
原因は何か
骨粗鬆症の治療で重要なのは、運動と薬(内服方法を含めて)です。
それに加えてビスホスネートでは飲み方が重要です。
ちゃんと朝起床直後に水だけで内服され30分は座って待っていたとの事。
運動もしていたそうです。
そして、詳しく聞いて原因がやっと分かりました。
三瀬峠の先の美味しいミネラルウォーターです。
美味しいコーヒーを飲むためだそうです。
ところが、ビスホスネートは
硬水(ミネラルウォーター)で内服すると錯体に変化して吸収できなくなるそうです。
これが原因でした。
ミネラルウォーター
水道水は軟水です。
8年間の薬代と努力が無駄になってしまいました。

⑤ビスホスホネートの様な
破骨細胞の働きを止める骨粗鬆薬
(4週間や月に1回の内服で朝食前に内服する薬や注射、半年に一回の注射薬など)では
副作用として抜歯や下顎の骨に対する治療をした後に生じる下顎骨壊死症が問題となりました。
治療に難渋するそうです。
ビスホスホネートを長期に使用している場合で、
口腔内の衛生環境が悪い方に発症するケースが報告されました。
現在はWHO(国際保健機構)
骨粗鬆症薬中止時の危険性と下顎骨壊死発症の危険性を比較して
骨粗鬆症薬を止める方が危険性が高いとの事で
骨粗鬆症の治療を止めずに、口腔内環境を改善して
下顎骨壊死が発症しないように注意する事を勧めていました。
当院では、最初からSERMと呼ばれる
下顎骨壊死症の発症に影響しにくい内服薬を
処方する事が多く、また、
歯の治療が必要な方には、必要であれば
下顎骨壊死症の発症に関係ない薬に変更しています。