445 湿布とお婆ちゃんと光線過敏症

数年前、ある所にお婆ちゃんが住んでいました。
そのお婆ちゃんはとても優しいおばあちゃんでした。


ある時、孫の野球少年が遊びにきました。


友達を連れてきたのですが、友達は野球中に手首を捻挫してとても痛がっていました。イラストはおじさんですが


お婆ちゃんは、かわいそうに思い、「冷やしなさい」と家から氷を持ってきました。
ちょうど、腰痛で病院を受診した直後でお医者さんから消炎鎮痛剤湿布薬を処方されていました。


おばあさんはその湿布を少年に貼ってあげました。
その友達はスッとした感じがして気持ちよかったので
お婆さんに「ありがとう」と言って家に帰って行きました。

その数週間後、その友達の保護者がお婆さんに会いに来られました。
友達は運悪く、湿布を貼った腕に「光線過敏症」を発症していました。
(光線過敏症で検索していただくと画像がいっぱい出ます。)
下記は参考ページです。
https://www.hisamitsu.co.jp/medical/data/hisamitsu-no38.pdf

湿布の形に赤く、水泡が形成され、火傷したような状態でした。
保護者の方によると湿布を貼った後、剥がした時は特に何もなかったが
2週間ほどして野球をしていたら、湿布を貼った形で湿疹ができた。
治療費を払ってほしいと言われました。

お婆さんは「親切心で湿布を貼ったので払えません」と断りました。

さて、これからが大変です。
保護者の方は裁判を起こされました。
お婆さんの親切な気持ち保護者の方の気持ちもわかります。
親切心から始まったこの裁判の結果は


お婆さんが数十万円を支払うことになりました。
なぜでしょうか?
私は弁護士ではないのでその内容に対しては詳しいコメントはできませんが、
結論は、お婆さんが湿布を貼った事湿布をあげた事が問題になりました。

①湿布を貼ることは医療行為である。
健康保険による治療で医師から処方された薬は他人にあげてはいけない

このふたつです。
医療行為とは条件があります。
1、治療を目的としていること
2、承認された方法で行われていること
3、患者本人の承諾があること

残念ながらお婆ちゃんの行為は上記に加えて、2、承認された方法(医療機関による資格者での医療行為)ではなかったのです。
そのため、おばあちゃんの行為は親切心ではあったのですが、
認められた行為ではなかったので責任が生じたのです。

光線過敏症を生じる湿布について、
患者さんに日光過敏症を説明すると『夜だけ貼っているので大丈夫です』と言われます。⇦間違いです
一晩でも貼ってしまうと皮膚内に原因物質(ケトプロフェンなど)が吸収されます。
その後、皮膚に入った薬は4週間ほどは皮膚内に残留して鎮痛効果を出します。同時に強い紫外線に当たると日光過敏症が生じます。
皮膚から消失するまでの約4週間は日光を避けなければなりません。
対応する湿布の袋の裏には注意事項としてちゃんと書いてありますので
初めて使う湿布はちゃんと注意書きも読みましょう。