379 なぜ成長痛と診断しないのか
研修医時代、指導教授が「何かおかしい」と入院させた少女の主治医になりました。
その子は微熱が続き、股関節の安静時痛が主訴でした。
明確な症状はなく、私は原因が分かりませんでした。
血液検査でも白血球が少し多い程度で異常な細胞はありません。
微熱と股関節痛も続く為、教授の指示で骨髄検査を行いました。
高齢で得た子供の為、父親はその子を溺愛し病気を怖がっていました。
骨髄検査は、必要な検査でしたが、少女は痛がり、そして父親は怒りました。
残念な事に結果は白血病でした。
しかし、まだ骨髄内の異常細胞が、末梢血液に出ていない、初期でもかなり早い時期でした。
すぐに治療を行う小児科医と一緒に、ご両親に説明し早期治療を勧めました。
ところが、父親は結果を信じず、納得しません。
他大学に転院し、もう一度検査をすると言いました。
もう時間がありません。
小児科担当医・教授と相談し、得られた全ての検査結果を渡して、他大学の小児科を受診してもらいました。
受診先も同じ診断でした。
「再検査する時間が惜しい。準備が出来ているならすぐに元の病院で治療しなさい」と説得され、
戻られて治療をすぐに開始されました。
その子は小児科に移り寛解導入出来たと聞きました。
最初の病院の病名は成長痛と言われていました。
これ以後、私は成長痛という説明や診断はつけた事がありません。
成長で痛みが生じる事はほとんどなく、何かの原因があります。
それを探して治療するのが我々医師の仕事と考えています