436 朝の第一歩の足底部痛(踵部)

①症状:朝起床時にベッドから降りる時や布団から立つ時に足底部の踵が痛む。
②原因:特に外傷の覚えはない。体重が増えた。靴を変えた。歩く距離が急に増えた。
④治療:体重減量、消炎鎮痛剤、足底板(インソール)、靴の変更、衝撃波治療(高価)などある。
    その他、ステロイド注射や手術療法もあります。
    外用剤・マッサージ・テーピングなどは効果は少ない。
    治療で使用する足底板は、医療装具なので保険適用となる。

この場合、足底筋膜炎の方が多いと思います。
人の足は良く出来た形をしていて、上半身に歩行時の衝撃が伝わらないように多くの衝撃吸収構造を備えています。
その① 厚い角質層特殊な構造を持つ皮下脂肪で衝撃を吸収する。
 踵には数百キロの負荷(体重の5倍ほど)がかかります。役所広司さん主演の「陸王」という番組がありましたが、陸上競技の靴のインソールを作るのに数億円もする機械の話がありました。それほど、難しいところです。それを人間は既にある程度は持っているのです。衝撃吸収のために、角質層は厚くなり、さらに角質層下に隔壁に囲まれた皮下脂肪の袋が多数あるために踵の骨にかかる衝撃(数百キロ)が吸収され、身体に衝撃が伝わりにくいのです。隔壁に囲まれた多数の空気と小さなバネが入った袋が組み込まれたベッドが宣伝されていますが、そのマットも良く似た構造です(人間が自然を真似て後から発明した?)。逆に、その構造のために薬が足底筋膜まで薬が届きにくいので、外用剤の湿布塗り薬の効果はほとんど期待できません。その為、内服薬や注射の方が効果があります。
その②、足底筋膜足のアーチ構造(弦を下に向けて置いた弓の様な足底筋膜と足のアーチ構造)で衝撃を吸収する。
 かかとで着地した時にアーチ構造が適度にたわみます。このたわみと弦の代わりの足底筋膜で衝撃を吸収しています。
 歩行時にかかとが地面に接触した時の衝撃は大学研究時に、床反力計という機器を用いて測定していましたが、おおよそ体重の5倍ほどでした。この衝撃がまともに上半身に伝われば、内臓を含んだ体全体にかかる衝撃も大きいので、数十年の長い年月の間に体は傷んできます。ところがそうならないのは上記の様な身体中にあるいろいろな衝撃吸収構造があるからです。

治療に関して
 外傷の覚えがなくても、足底筋膜炎症を生じる事があります。上記のように皮下脂肪と角質層の厚さから残念ながら湿布がほとんど効きません。
その為、内服による消炎鎮痛剤の投与と、構造の維持の為にアーチサポートを使用したアーチの保護を行います。アーチサポートの作成はオーダーメイドになりますが、保険適応(医療機関のみ 整骨院では対応できません)ですので数千円レベルで作成できます。それでも痛みが強い場合は、注射を行うこともありますが、そこまでされる方は少ないようです。その他、衝撃波を用いたものやいろいろな治療方法があるようですが、決め手が少ないようです。手術で足底筋膜の一部を切除する事もあります。私もお一人だけ手術を執刀したことがあります。結果は良かったのですが、成功率はあまり高く無いと聞いていますのでオススメはしていません。以上より、アーチサポートと鎮痛剤の内服で経過を見ていただきたいと思います。