435 病名を聞いて症状を勘違いする

腰部脊柱管狭窄症の症状は下肢の痺れや痛みで、腰痛はあってもなくても良い
②同様に腰椎椎間板ヘルニアでは下肢の痺れや痛みが主たる症状
頚椎症性神経根症も首の痛みではなく上肢の痺れや痛みが主
手根管症候群の痺れや痛みは手首が原因で手首に症状がある
⑤腰部脊柱管狭窄症、腰椎椎間板ヘルニア、頚椎症性神経根症などは腰や首の姿勢により症状が増減する。

腰部脊柱管狭窄症 ≠   腰痛

腰部脊柱管狭窄症と聞いて、多くの人は『腰が痛いだろうな』と考えると思います。しかし、違います
主たる症状は下肢の痺れや痛みです。実際に『腰部脊柱管狭窄症』と診断し、説明した方の中には、『私は腰は痛くないですが、なぜその病名ですか?』と言われる方も少なくありません。最新の診療ガイドラインでは『腰痛』は診断基準から外されています。つまり、腰痛があるか、ないかは腰部脊柱管狭窄症を診断では必須条件ではないのです。よく、医者でない方で『私は腰部脊柱管狭窄症の人を何人も手術せずに治しました』といわれる方がおられますが、その方の本を見てみると腰痛が治ったと書いています。多くは単なる腰痛症で『腰部脊柱管狭窄症』とする診断が間違っていた事が多いようです。これに似た状況のものとして腰椎椎間板ヘルニアがあります。この病気も下肢の痛みは痺れが主となり、腰痛がなくても発症します。同様に頚椎症性神経根症も頚椎が原因で手先の痺れや痛みが生じます。
 手根管症候群であれば手首に原因があるので、手首になんらかの症状があり、患者さんも痺れの原因をなんとなく自覚されます。ところが、頚椎症性神経根症では首のところで神経が圧迫を受けますが、首回りにはあまり症状がなく、肩こりや手先の痺れや痛みのみの時があり、原因不明の痺れ感や痛みとなる事が多いようです。しかし、よく症状を聞いてみると、首や腰の姿勢によって症状の悪化が認められます。姿勢により神経の圧迫状況が変わり、症状の増減があるからです。例えば、腰部脊柱管狭窄症では、腰を伸展した状態で、長く歩く長く立つと下肢の痺れや痛みが出ます。その為、座るなどして腰を少し曲げた状態だと急激に痛みが消失する事があります(間欠性跛行)。頚椎症性神経根症では、理容室や美容室で仰向けで洗髪をする時に、首を後方に曲げると、手の痺れや痛みが生じます。整形外科の扱う疾患は神経の圧迫を原因とするものも多く、これらは原因部位と症状発現部位異なる事が多いのです。はじめは納得しない方もいるのですが、説明しているうちに理解されます。病名から症状を予想するのではなく、説明を聞いて理解してください。

MRI検査

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