369 膝の水
膝の水ほど患者さんと医師の考えが乖離している事は無いようです。
膝の水(関節液)は膝を守っています。ただし、あまり多くは要りません。
膝に必要な関節液は関節内の滑膜や軟骨を覆う位(5cc)あれば良いのです。
正常な膝の場合、関節液は注射器で吸引できません。
そして関節液は一定スピードで作られ、一定のスピードで吸収されて、
総量をコントロールしながら循環しています。
急にマラソンをしたり、球技の試合をしたり、重量物を持ったりして、関節を捻ったりして
軟骨や靭帯・関節包などに大きな負担がかかり、傷がついたり、関節内に炎症が生じたりすると
関節液が多量に作られます。急に関節液が多量に作られると吸収できずに溜まり、
風船のように膝の関節包が伸びきって痛みが生じます。
そんな時に適正量の関節液を残して多過ぎた関節液を注射器で抜きます。
不必要な分だけ取る訳で治療の意味は少ないのです。
「抜いたら癖になる」なんてありえません。
水が溜まる原因は外傷(含 動かし過ぎ・肥満)、病気などです。
膝に体重の数倍〜十数倍の力がかかるので
肥満になるほど軟骨負荷が増え、歩き過ぎると軟骨損傷となります。
そして膝を守る為に多量の関節液が作られ、吸収できずに溜まります。
水を抜いて癖になるのでは無く「水を抜いた時には癖になっている」のです。
頻回に水を抜く必要がある人は膝の関節内に病気や傷があって治り難い状態なのです。
そして、関節液では治せないために、ヒアルロン酸や消炎鎮痛剤、時にはステロイドで軟骨を守り
炎症を減らす治療などを加えます。
完全に抜くのではなく、必要の無い関節液を抜き、必要な量の関節液を残すのです。
関節に水が溜まり過ぎて水を抜く時は、痛みを和らげると同時に関節内注射の治療が行えます。
正しい知識で治療を受けて治しましょう。