12 肉離れ

肉離れ」とよく言われて受診される方がおられます。
「肉離れ」とは何でしょうか?
整形外科の教科書に詳しく書いてはいません。
しっかりした定義が無いようです。従って、結構適当に言われています。
診断名ではなく、ほとんどの場合は受傷部位の筋損傷か、腱断裂を示していると考えています。
肉が離れている訳ではなく、部分的に切れています
福岡のある警察官の方は強盗を捕まえた時に大腿四頭筋を切断されました。
手で触れても筋肉の切れている部分がわかる状態でした。私が手術を行いました。
現在は完治しましたが、かなりの苦痛を伴うリハビリを数ヶ月行いました。
肉離れの場合、筋損傷ですので、3日や4日で治りません
厄介なことに筋損傷が治っていなくても、痛みが取れる事があります
本当に筋肉が切れているのであれば、1ヶ月以上治癒にかかります。
詳しい医学研究によれば、筋損傷が完治するのには8〜12週間かかる事が分かっています。
痛みが取れても、筋損傷は直っておらず、無理をすれば筋肉は再度、損傷を起こします。
プロ野球選手は専門トレーナースポーツ医がついていますが、それでも3週間以上の戦線離脱をします。
専門トレーナーのいないアマチュアが、プロ選手より早く治る事はないのです。
痛みがなければ、治ったと錯覚して、早過ぎる運動負荷をかけます。
根性で傷は治せません
十分な治療をせずに速すぎる運動を無理をすると筋損傷部分が瘢痕化して一生治らない傷を負う事もあります。

私のクリニックで悲しいことがありました。
ある中学生(野球少年)が右肩が痛いと受診されました。
明らかなリトルリーグショルダーで右上腕骨を痛めていました。
この時点では何とか投げられるけれども無理をすると危険な状態でした。
このままでは骨のダメージが大きくなると思い、投球の中止を勧め、
ホークスの選手を診察する先生への紹介状を書きました。
結局、中学生はその先生を受診されず、投球を続けながら、肩の痛みがあれば、
監督の勧める鍼灸師の施術を受けていたそうです。
疼痛は改善せず悪化し、当院に再び受診されました。
それは、ひどい状態でした。監督の指示のもと投球を行い、無理をしたそうです。
一時的に痛みが和らいでも、すぐに痛くなり、投球も満足に出来ない状態になりました。
その子は結局、野球をあきらめたそうです。
監督は、新しい選手を見つけ、その選手を指導し、中学生には何も言わなくなったと聞きます。
彼は見捨てられてのでしょうか
彼は「プロになる夢」をあきらめ、野球は趣味として、サラリーマンになりました。