332 最近、腕が上げられないのです

上のように言われる患者さんが多いのですが、後に全て聞きなおす事になります。まず、『最近』という言葉です。意味は『現在にいちばん近い過去』です。それが昨日なのか１週間前なのか、１年前なのか人により大きく違うのです。その為、毎回聴き直す事になるのです。次に「腕が上がらない」ですが、大きく分けて

①痛くて上げられない、
②上げられるけど痛みが怖くて上げられない、
③痛みは無いけれど腕を上げられないの３つがあります。

いずれも後に詳しく聞きますが、質問の意味を理解してもらえない方がいます。

①の例では関節炎や肩全体の炎症などで痛みが強く、安静時でも痛むか、少しでも上げようとすると強い痛みが生じる例です。
②も同様ですが、①よりは軽症で安静時には痛みが無く、肩を上げる時にある姿勢で痛みが出るケースが多いです。
③は腱板断裂や脳梗塞、神経損傷などいろいろあり、痛みを伴わないのに腕が上がりません。

医療機関に受診されるのは①のｹｰｽが多く、よく診るのは②のｹｰｽなのです。
しかし、最も注意が必要なのは発症してから受診までが遅い③のｹｰｽです。
以前にALS(筋萎縮性側索硬化症)の方を診察しました。
この方は腕が上がらない(③の例)と訴えて多くの整骨院や整体の施術を受け、多くのお金を使い、破産状態でした。
診察時に最近目が開けにくいと言われ、他疾患を疑い大学の総合診療科を紹介しました。
ALSで余命５年と診断され、実家に帰られました。自己判断はやめてまずは医療機関を受診へ