14 腰椎椎間板ヘルニアと腹部大動脈

今回は、椎間板ヘルニアの診断で治療しているが治らないので診てほしいと来院された方のお話からです。
症状は椎間板ヘルニアの症状でした。
しかし不思議な点は診察する度に神経症状の範囲が週単位で拡がるなど、椎間板ヘルニアと異なる点でした。
通常、腰部椎間板ヘルニアの場合は、ヘルニアの部位が変わらないので、
痺れ感や痛みなどが生じる部位も変わらず、ある意味症状は安定しています。
ところが、この方は週単位で症状が広がっていたため、通常と異なるものと判断しました。
そのため、すぐにMRI検査を行いました。
腹部大動脈瘤でした。
正直なところ、腹部大動脈で腰部椎間板ヘルニアの症状が出現するとの考えはありませんでした。
しかし、腹部大動脈はかなり大きいようですぐに治療を開始した方が良いと考えられました。
すぐに、大学病院へ紹介したところ、手術となりました。
不思議な事に腰部椎間板ヘルニアの症状は術後消失していました。
次は私が最も反省している経験です。
その方は、背中を軽く叩くと強い痛みが生じるので筋性腰痛腎疾患を疑いました。
消炎鎮痛剤の処方と血液検査(腎傷害の疑い)を行いましたが、結果は数日遅れるので判明するまでは安静にするように説明しました。
金曜日の午後の採血だったため、土曜日朝に血液を提出し、月曜日の朝に結果がでました。
結果を見てびっくりです。腎不全でした。
すぐに専門医受診を勧めるため電話をしました。
ご家族はかなり怒っておられました
日曜日に相撲をマス席で観戦されていて、その最中に倒れて、救急病院に入院されたそうです。
幸い、腎疾患が専門の病院に入院中でした。
私の診察の腕がもう少し良ければと悔やんでおります。
その他にも例があります。
また腰痛で来院し、通常よく見る部位の疼痛ではなく、かなり上の部分を痛がっておられたので、
後腹膜腫瘍を疑い外科を紹介した方がいます。
その方は腎癌でした。
すぐに、外科での治療を開始され、手術をされました。
このように整形外科と思われるような症状でも診察や検査の結果では、いろいろな疾患が隠れています。
診察は手足の病気やケガのためだけでなく、隠れた病気がない事を確認するためにも行うのです。