関節鏡手術とヘッドアップディスプレイ その昔
25年ほど前にデジタルオタクだった私は自宅でソニーのヘッドアップディスプレイ(以後HUD)を使って大迫力映画を見ておりました。映画に没頭でき、横のボタンを押すとシースルーで外の状態が見れる優れものでした。で、ふと、関節鏡手術で使用できないかと考えました。
関節鏡手術とは関節に小さな穴を開け、関節鏡という機械を関節内に挿入して先端の画像をファイバースコープを通してモニターに映し出します。そして別の穴から特殊なハサミやピンセットを入れて、膝の悪いところを切除したり、削ったり、半月板を縫合したりする手術です。小さな穴を開ける手術ですので患者の負担が少なく、術後も早いうちからリハビリが出来ます。
その頃は週に数例、関節鏡手術をしていましたので、手術に何か工夫できないかと考えていたところでした。
幸い、私が持っていたHUDはシースルーモードがありますので、HUDの着脱することなく手術を続行できます。
そこで早速HUDを装着して手術開始。
お〜、目の前に患者さんの膝の中がドアップで写ってます。
半月板の部分切除でもしっかり見えて、こりゃ良いぞと思いました。
素晴らしい。
手術に熱中していると、ふと、周りのナースの笑い声が。
どうしたのかいなとシースルーモードにすると、あれ、天井が見えます。
手術中、関節の上の方を見る時に、関節鏡の手元を下げるだけでよいところを
同時に、体をのけぞって、天井を見ているような格好をしていました。
術後、とても首や腰が凝りました。体に悪い。
自分が慣れればよかったのですが、準備が煩雑な事と大きめのモニターを近づければ
HUDを使用するのとそう変わらなかったのでやめちゃいました。